自由の為に戦え。強国イングランドと戦い自由を勝ち取ったスコットランドの英雄たちの物語/英国太平記 小林正典

太平記という文字が目に入り、手に取ってみると英国と頭についていて日本の太平記ではないことに興味を持って読むことにしました。

13世紀~14世紀頃までのスコットランドがイングランドから王権と自治を取り戻し、和平を実現するまでの激動の時代を描いた作品です。

【簡単なストーリー】

1286年、中世スコットランドの黄金時代を作り上げたアレクサンダー3世が崖から落ちて死んでしまった。

突然の王の死に混乱するスコットランドは、後継者問題に揺れることとなった。

アレクサンダー3世が生前に後継者に指名したのは幼い娘マーガレットだが、本当にそれでいいのか議論が巻き起こり、王家の血統の中で最も近い二人の男子が候補に挙がった。

ジョン・ベーリョルとクレーグ・ブルースの両名は突然舞い込んできたスコットランド王位を手にするために動き始める。

王位をめぐって内乱が起きることを恐れた司教たちは、マーガレットを擁立して主だった勢力から摂政を選び出し合議制でスコットランドを統治する案で取りまとめた。

スコットランドが王位継承問題で揺れている頃、イングランド王エドワード1世にもたらされたアレクサンダー3世の事故死は、フランス征服の夢の実現にまたのない機会に思えた。

エドワード1世はスコットランドを征服する為、水面下で準備を整え計画を進めていく。

マーガレットが戴冠することが、エドワード1世の計画の一つと気づかないスコットランド側は、内乱が起きず無事に王位継承が行われることに安堵していたが、戴冠式の前にマーガレットが急死してしまう。

計画を進めていたエドワード1世にとってもマーガレットの死は不測の事態だったが、王位継承問題で再び揉めるスコットランドの状況を利用することにした。

またしてもスコットランド王位が空となり、ベーリョル派とブルース派が再び対立をし内乱が避けられない状況の中、混乱に乗じてエドワード1世は王位継承について中立の立場から調停をすると名乗り出る。

内乱を避けたいスコットランド側は調停を依頼するが、エドワード1世はスコットランドの宗主権はイングランドにあるとして、調停の場を利用して強引に宗主権を認めさせエドワード1世にとって都合の良いベーリョルをスコットランドの王位につける。

スコットランドの独立を認めず、奴隷のように扱うエドワード1世に反旗を翻したスコットランドだが、それが苦難の始まりだった。

数多の血を流し、犠牲を積み重ね、裏切り裏切られを繰り返しながら小国スコットランドは強大な王国イングランドと戦い続ける。

著:小林正典/講談社文庫

どんな本?

13世紀から14世紀の間、スコットランドがイングランドの脅威にさらされながら自由を求めて戦い続けた時代を描いているのですが、内容が壮絶です。

負けるということは奴隷になるということ、ということが描かれなぜそこまでして戦うのかが納得できるようになっています。

戦争に負けて被支配者になるということがどれほど悲惨で惨めなのかが、イングランドが攻め入り蹂躙していく様が描かれることで、よくわかるようになっています。

街一つが見せしめで虐殺され住人が一人もいなくなったり、スコットランド側が女性をイングランド側に提供させられたり、過酷な労働を強いられたりと奴隷としての扱いはスコットランドの民を困窮させ苦しめます。

貴族と平民の階級の差によって、戦争での扱われ方の差も描かれています。

一般兵士は戦いで命を落としたり捕虜にされても殺されたりと、戦争に勝たなければそのまま死に直結しますが貴族層は違います。

貴族たちは家柄や資産によってお金さえ支払えば自分の国へ戻ることが出来ました。

そしてまた生きて帰ってきた貴族たちは戦いへ繰り出します。

平民は命でその結果の責任を取らされるのに、お金だけ支払って戦争の責任を取らない貴族たちへの不満が描かれたり、生き残るためにその時の情勢を見て裏切りを繰り返すことが普通に描かれたりと、文化も制度も違うだけあって日本の中世の時代劇小説とは異なることが多く読んでいて新鮮です。

イングランド軍は武器も戦いも洗練された軍隊ですが、スコットランド軍は武器は粗末で兵士も農作業道具を持って戦いに出るような、素人の集まりです。

強大なイングランド軍に味方するものや情勢によっては裏切る味方勢力、貴族と平民の軋轢など様々な問題がある中、自由と自治を求めて圧倒的不利な状況の中全てを賭けて戦ったスコットランドの戦いは大変面白く、気づけば読み終わってしまうほどの大作です。

登場する人物の中には後にその子孫たちが世界を変える大物になるなどの補足が描かれ、膨大な資料をもとに細部に至るまで丁寧に作り上げた作品であることがわかります。

後の子孫が及ぼした影響を考えると、イギリスが現代の世界の基礎を作ったと言っても過言ではありません。

【王位継承問題】

アレクサンダー3世の事故死により突然持ち上がったスコットランド王位継承の問題は、直系の男子がいないことで王位を巡った内乱が勃発しそうになっていました。

争うのは王家の血統で最も近いとされたベーリョル家とブルース家の両家で、それぞれに貴族たちが付き、スコットランド王位を争う姿勢を見せていました。

ブルース家は一度王から後継者に指名された過去があり、王位に就くべきはブルース家だと主張します。

この時代領地が他国にもあることは珍しいことではなく、ブルース家はスコットランドとイングランド王国内に領地を持っており、イングランドとの関係にも気を配っていました。

ブルース家がイングランド内にも領地があり、イングランド側と関係を持っていたことが後にロバート・ブルースを苦しめることになります。

この時代の教会の司教たちは、教育が一般民衆まで行き届かない当時では数少ない知識人たちで、地位と権力がありました。

スコットランドに内乱が起こることを恐れた司教たちは、穏便に事を納めるため幼いマーガレットを擁立して摂政を配置し、合議制で政治をすることを画策します。

ベーリョル側は司教からブルース家にイングランド王エドワード1世が味方に付いたら勝ち目はないと説き伏せられ、マーガレット擁立を認めます。

一方で、実はエドワード1世がフランスと争いの最中でイングランドにおらず、すぐには援軍が出せる状況ではないことを知っているブルース家には、エドワード1世の援軍がなければ勝てないと話し、マーガレットを擁立して摂政による合議制を納得させます。

この時、ベーリョル側が司教たちに騙されずブルース家を攻撃していたらスコットランドの未来は大きく変わっていたでしょう。

司教たちは内乱が起きない事に安堵しましたが、マーガレットの擁立が新たな火種を生み出したことに彼らは気づきません。

とにかく内乱を避けようとする司教たちの行動で、スコットランドは少しずつ最悪な状況に追い込まれていきます。

【エドワード1世の罠 失われた自由】

アレクサンダー3世の事故死は、エドワード1世にとって長年の夢であったフランス征服を叶えるまたのない機会だと思えて、フランス征服の為の足場固めと兵力の増強を行うためスコットランドを征服することを画策します。

エドワード1世はマーガレットをスコットランド王位に就かせて、自らの皇太子と結婚させ実質的にスコットランドを支配し、イングランドに吸収合併させて戦わずにスコットランドを手に入れようと考えます。

そこへ何も知らないスコットランド側からマーガレットの擁立を容認してほしいと連絡があり、エドワード1世は喜んでスコットランドに協力をします。

そして、将来的にマーガレットとイングランド皇太子が結婚することをスコットランドに申し入れをし、永続的な平和を餌にしてそれを認めさせます。

スコットランド側もまた、イングランドによって独立性が失われることを十分警戒した上で将来的な結婚の約束を認めますが、それらすべてがエドワード1世の策略であることに気づきません。

スコットランドとイングランドそれぞれが計画通りに進んでいると考えているところに、マーガレットが急死してしまいます。

全てがご破算になってしまったことを嘆く両国ですが、スコットランド王位を巡って再び争いが起きようとしてる状況を、エドワード1世は利用することにします。

王位継承問題の調停を名乗り出たエドワード1世は、ベーリョル側には王位継承はベーリョル側有利として説き伏せ、ブルース側には長年のイングランド王国に対する忠誠を褒めエドワード1世がブルース家を支持することを伝えます。

両家は争いを止めて、エドワード1世による王位継承問題の調停を受け入れます。

エドワード1世は調停の場となったノラム城に集まったスコットランドの主だった人々の目の前で、イングランドがスコットランドの宗主権を持つと発言し、ノラム城を取り囲んでいたイングランド軍が気勢を上げ、圧倒的な兵力を見せつけます。

アレクサンダー3世がもたらした平和に慣れ切っていたスコットランド側はイングランド軍に驚き、戦争を避けるため不本意ながらも宗主権を認めることにします。

エドワード1世は大した才覚のないベーリョルをスコットランド王位に就けます。

スコットランド王位を手にしたベーリョルは喜びますが、エドワード1世から当然のようにフランス征服の為の出兵を命じられると、エドワード1世がフランス征服の為スコットランドを陥れたことに気づきます。

エドワード1世の夢の為にスコットランドの民を犠牲に出来ないとフランス出兵を拒みますが、立場を弁えないベーリョルにエドワード1世は内政干渉をしベーリョルを貶め屈辱を与えます。

奴隷のような扱いに耐えかねたベーリョルは反撃に出ます。

【ベーリョルの廃位 悪夢の始まり】

大国イングランドに対抗するため、ベーリョルたちはフランスと密かに同盟を結ぶことにします。

エドワード1世を快く思わないフランス王フィリップ4世は、イングランドを叩きのめすためスコットランドと協力して挟み撃ちを仕掛けることにします。

ベーリョルの裏切りに気づいたエドワード1世は、スコットランドと戦争を始めます。

その頃、一度は王に指名されながら王にはなれず、続いて巡ってきた王位を手に入れる機会ではエドワード1世に裏切られベーリョルが王となってしまい、目の前にありながら逃し続けたスコットランド王位にブルース家は執着していました。

祖父、父と続けて王位を逃しエドワード1世に裏切られた禍根が残る中、若いロバート・ブルースは祖父や父ほど王位にそれほど興味がありませんでした。

エドワード1世に気に入られ可愛がられていたロバート・ブルースは、イングランドの貴族としてエドワード1世の側に仕えます。

スコットランドと戦争が始まると、ベーリョルに与する気がなかったブルース家はエドワード1世に忠誠を誓い、スコットランド軍と戦います。

スコットランド側からは裏切り者と罵られますが、ブルース家はベーリョルたちに勝ち目はないと計算していました。

イングランド正規軍とスコットランド正規軍の力の差は圧倒的で、スコットランド主力軍は壊滅状態となり、フランス軍の救援が間に合わずスコットランドは降伏をします。

ベーリョルは屈辱的な条件をすべて受け入れ、スコットランドは王権と自治、自由全てをベーリョルの廃位と共に失います。

事実上スコットランド王国は消滅し、今回の戦争によるイングランドの出費を回収する名目で過酷な徴税が始まります。

そして平和に慣れ切っていたスコットランド人たちは、戦争に負けるということがどういうことなのか、身をもって知ることとなります。

あらゆるものをイングランドに奪われ、人として扱われない状況にスコットランド人のイングランドに対する怨嗟は強くなっていきます。

【英雄ウォレスとロバート・ブルースの決起】

王権は消滅してもスコットランド教会組織は生き残っていたことから、スコットランド全土の教会組織を利用して、聖職者たちは抵抗運動を呼びかけます。

ウィリアム・ウォレスは荷馬車を襲撃し、奪い返した物資を教会組織へ持っていき各地へ分配をします。

ウォレスの活動はレジスタンス運動として支持を集め、その動きは各地に広がっていきますがイングランド軍に目を付けられ、ウォレスの妻は見せしめに焼き殺されます。

怒り狂うウォレスは復讐を誓い、イングランド兵の本陣を襲撃し勝利をします。

ウォレスの勝利は、虐げられているスコットランドの人々の希望となり抵抗運動は加速していきます。

大貴族の一族であったモレーの決起と、民衆を味方につけ勢いに乗るウォレスたちの登場はスコットランド貴族たちを動揺させ、あの強大なイングランド軍に勝てるのかどうかその力量を推し量るようにして静観をします。

そこへ、有名な貴族ダグラスがウォレスと手を組んだことで、スコットランド内の小さな一揆と思われていた動きが、イングランド側に反乱軍としての認識をさせます。

ウォレス、ダグラス、モレーたちの動きを見過ごせなくなったイングランドは鎮圧に乗り出します。

一方、スコットランドの貴族でありながらイングランドの貴族でもあり、ベーリョルを廃位に追い込んだ戦争にもイングランド側で参戦したロバート・ブルースは、スコットランドの人々が虐げられているのを心苦しく思っていました。

また、スコットランド内の領地ではイングランド軍の収奪を受けており、ウォレスたちの行動を知ったロバート・ブルースは思い悩みます。

そこへ、ダグラス城を攻めるよう命令が下りイングランド軍と共に向かいますが、目の前で虐げられるスコットランド人とスコットランド人としてのロバート・ブルースに助けを求める声に、ロバート・ブルースはイングランド軍を止めます。

スコットランド人だから助けるのかとイングランド軍から罵られ、ロバート・ブルースはいったい自分はスコットランド人なのかイングランド人なのか、その複雑な立場からわからなくなります。

思い悩むロバート・ブルースのもとへ反乱軍の使者がやってきます。

スコットランドが一つに纏まってイングランドと戦うには、正当なリーダーが必要として王位継承権があったロバート・ブルースを反乱軍へと誘います。

ベーリョルの無能さに懲りていた為、反乱軍はロバート・ブルースを引き込もうとしていました。

熱心な勧誘に心を動かされたロバート・ブルースはイングランドに反旗を翻すことにします。

【劇的な勝利と敗北 裏切り】

反乱軍に加わったロバート・ブルースですが、エドワード1世のお気に入りでスコットランド軍と戦ったという事実は重く、中々信用されません。

そこへウォレスとモレーが合流したことで、反乱のきっかけとなった両者は信頼と人気が高くスコットランド王国軍のリーダーとなり指揮をしていくこととなります。

スターリングブリッジの戦いにおいて、イングランド正規軍に劇的な勝利をもたらしたウォレスは英雄となり、指導者としての立場は確立されました。

スターリングブリッジの戦いの勝利はスコットランドの貴族たちを動かし、ウォレスのもとに多くの貴族が集まりました。

その中にベーリョル派のコミン一族がいて、ベーリョルの王位はいまだ有効であるとし、ウォレスはベーリョル王の代理としての立場でスコットランド王国軍を率いているという建前を作ります。

ロバート・ブルースにとってベーリョルの王位が有効なことは都合が悪いのですが、何も成果を挙げていないロバート・ブルースはそれを黙って受け入れました。

スターリングブリッジの戦いの敗北に激怒したエドワード1世は、本気でウォレスたちスコットランド王国軍を潰しにかかります。

スターリングブリッジの戦いでイングランド軍に勝てるという自信を持ってしまったスコットランド軍は、積極的に戦うことを選びます。

スコットランド軍の熱気に押されてウォレスはイングランド軍に決戦を挑みますが、大勢の死者を出し大敗します。

ウォレスの栄光は地に落ち、ロバート・ブルースとジョン・コミンの二人が摂政としてスコットランドを率いていくことになりますが、ジョン・コミン派閥はロバート・ブルースを裏切り者として信用せず、また協力する気もありませんでした。

一つに纏まらないスコットランド軍は劣勢で苦しい戦いを強いられますが、特にイングランド軍の侵攻を防ぎ続けたロバート・ブルース陣営は、戦いの連続とジョン・コミンたちの救援がない為崩壊寸前でした。

ベーリョルが復位した場合、ロバート・ブルースが不利になるのは火を見るよりも明らかで、このままスコットランドの為に戦い続けても未来はないとして、ブルース家が生き残る為イングランド側へ寝返ることを決断します。

再びスコットランドを裏切る形となったロバート・ブルースは、受け入れる側のイングランドからもこれまでの戦いで被害を被った貴族たちから侮蔑のまなざしを受けます。

裏切りの汚名にまみれながら、エドワード1世が老いてそれほど長く生きないことを見越してロバート・ブルースは、機会を待つことにします。

【殉教者ウォレス 反撃の狼煙】

同盟を結んでいたフランス王フィリップ4世は法王と不和になったことで、エドワード1世と攻守同盟を結びます。

スコットランドにとって大国フランスとの同盟は切り札でしたが、フィリップ4世から切り捨てられたことで、スコットランドは孤立しエドワード1世は勢いづいて攻め入ります。

イングランド軍の勢いに押され、ついにスコットランドはジョン・コミンを代表として降伏を表明し、再びスコットランドはイングランドとの戦いに敗れることとなりました。

エドワード1世が出した降伏の条件は寛大なものでしたが、ただ一人エドワード1世が絶対に許さない人物がいました。

スターリングブリッジの戦いで勝利をもたらし、平民出身でありながら民衆を率いてイングランド王に立ち向かった英雄ウォレスです。

平民が一つに纏まって王という絶対的な存在に歯向かったということは、エドワード1世にとって許せないことであり、王と貴族たちからなる現在の制度を破壊しかねない脅威として、ウォレスの存在は抹殺する必要がありました。

スコットランドに劇的な勝利をもたらしたウォレスの捕縛命令をジョン・コミンたちは受け入れ、懸賞金までかけられたウォレスは仲間の裏切りにあって捕まってしまいます。

様々な罪状をつけられ、ウォレスは極刑に処されます。

あらゆる苦痛を与えられ、見せしめに殺されたウォレスの最期はスコットランドの人々に反イングランドへの思いを一つに纏めます。

エドワード1世は王に逆らった平民出のウォレスを残酷に殺すことで、もう二度と逆らう気を起こさせないようにする狙いがありましたが、それは逆効果となりました。

ウォレスの死はスコットランドの人々の心を一つにし、殉教者ウォレスとして刻み込まれます。

貴族たちは安泰で、スコットランドの人々の為に立ち上がり戦ったウォレスが残酷に殺された事実は、平民たちに現在の王と貴族の制度に疑問を持たせます。

スコットランドを裏切り再びイングランド側へとついたロバート・ブルースは、スコットランドとイングランド双方から裏切り者と罵られ、軽蔑されます。

エドワード1世の息子、カーナヴォンはロバート・ブルースを気に入っていた父エドワード1世から、ロバート・ブルースと比べられ叱責されたことを根に持っていました。

エドワード1世が長くないことを考えると、カーナヴォンが王位に就くことは遠い未来の話ではありません。

カーナヴォンは特にロバート・ブルースを毛嫌いしていた為、このままイングランドへ仕えていても良い未来はありません。

スコットランドの人々の悲惨な生活ぶりを聞くたびに心を痛めていたロバート・ブルースは、エドワード1世がいなくなることでスコットランドに再び反撃の機会があると考えます。

思い悩むロバート・ブルースに、スコットランドを団結させるため司教が密かに訪ねてきます。

強大なイングランド軍に立ち向かうためにはスコットランド全土が一つに纏まり、戦う必要があります。

司教が間に入り、ロバート・ブルースとコミンでどちらがスコットランドの王となってイングランド軍と戦うかの話し合いが行われます。

今まで対立してきた両家ですが、イングランドに対抗するため協力し合うことにします。

コミンを信用していたロバート・ブルースでしたが、間一髪のところでコミンの裏切りに気づきます。

想定外の事態に窮地に追い込まれたロバート・ブルースは、十分な足場固めと味方勢力を得られないまま、スコットランド王として即位しイングランドへの反旗をスコットランド全土へ呼びかけます。

ロバート・ブルースの裏切りに激怒したエドワード1世は、ロバート・ブルースたち反乱軍を徹底的に叩きのめすために動き出します。

【最後に】

スコットランド王となったロバート・ブルースには数々の試練が訪れます。

何度も全滅しそうになりながら、スコットランド各地を彷徨い徐々に味方を作りながらイングランド軍へと立ち向かっていきます。

絶望的な戦力差と不利な状況から戦い、ついにイングランド軍を打ち破る様子は歴史浪漫を感じさせます。

情勢を見ながら裏切りを繰り返したブルース家は、裏切り者と罵られながら屈辱に耐えスコットランドを救いました。

少しでも歯車が狂えば、ロバート・ブルースは生き残れなかったでしょう。

現在のイギリスでスコットランドの独立問題が報道されることがありますが、本書でその歴史的背景の一部を知っていると、イギリスとスコットランドの関係について見方が変わると思います。

高校で世界史を勉強している人は、見覚えのある単語や人物がたくさん出てきますので勉強の合間に読んでみると、中世のヨーロッパの歴史についてより理解を深めることが出来ます。

文字通り全てを賭け、多くを失いながら戦ったロバート・ブルースの生き様とスコットランドの苦難の歴史はとても面白く、戦記物語が好きな人にお勧めの作品です。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする